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異邦人 世界の辺境を旅する

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上原善広著
2014年

目次
蒼い砂塵ーパレスチナ・ガザ戦記
バグダッドジムー混迷を深めるイラクで出会ったロマの女
ゴート族の犬ースペインの被差別民カゴを旅する
毛沢東と宿命ーネパール革命戦争と売春カースト
マフィア映画の虚と実ーイタリア・マフィアとコルシカ民族主義
気の毒なウィルタ人ー日本とロシアに引き裂かれた北方少数民族の物語


以前書いた「被差別のグルメ」の作者。今回はノンフィクション作家兼ジャーナリストとして世界の戦争を軸に、難民、被差別民にスポットを当てていく。特に興味深いのはネパールの売春カーストとウィルタ人。

ネパールと聞くとまずは世界最高峰のエベレスト(チョモランマ)、シェルパなど山と少数民族の国と思い、ふと足元を見るのを忘れてしまう。そこには登山という近代スポーツとは全く関係のない山の民の貧しさ、安定しない政治、カースト制度という暗い所がある。著者はマオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)に取材を申し入れる中、道中で売春の実態に迫る。女性兵もおり、読んで国と生活なんかを考えさせられる。日本の若い政治運動家なんかに読ませたいね。


ギリヤークは現在ではニブフと呼ばれている。ちなみにオロッコの現在はウィルタ。メモしとこ。
・ニブフ、漁とアザラシ、トドなどの海獣狩猟が主で、陸上ではテンなどの小動物程度。犬との関係が深い。浅黒い、杉またはカラマツから生まれた伝説に由来。
・ウィルタはトナカイを飼っているのが特徴。トナカイに騎乗しながらの狩猟を行う。白樺から生まれたという伝説があり白い肌。
・他にウリチ(サンダー)、エベンキ(キーリン)、ヤクート。

これら5民族を集めて作ったのが「オタスの杜」という集落。ポロナイ川の河口、敷香から3キロほどで、船でしか行き来できなかったがサハリン南部の三分の一の百五十人程が集ったという。彼ら少数民族は地理に長け戦時中スパイとして活躍した。しかし北と南、同じ民族同士でスパイし合うのは心苦しかったであろうことは容易に想像できる。追い討ちをかけるように終戦後、彼らは日本とロシアに引き裂かれ、家族と別れた人も多くいる。行ったこともない日本に渡るか、樺太にとどまりロシア人となるかはどちらが幸せだったか分からない。日本を知る上で教科書に載ることはなさそうな内容であるが、私は知ってより多くの事を考えられるようになった。
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